♣はじめに♦
断酒会という自助グループの中で、同じ悩みを持つもの同士が、理解し合い、支え合ってきました。
あなたの生き方を変えるきっかけになれば、と心より願っております。
お酒をやめたい人はどうぞ!
全日本断酒連盟「酒をやめたい人のために」参照
♣2 逃げていませんか♦
あなたは酒が直接原因で体調を崩しているのに、酒がやめられなくて困っていませんか。
前夜の記憶がスッポリ抜け、何かまずいことをやったのではないか、と不安になっていませんか。
酒が切れると集中力がなくなり、仕事が手につかなくなっていませんか。
その焦りを押さえるために、酒の力を借りていませんか。
酒を飲むための嘘がすらすら出るようになり、後ろめたさを感じていませんか。
妻(夫)から離婚話が出て、狼狽していませんか。
しかし、あなたは原因が自分の酒にあるという事実から目をそらし、問題解決を先送りしていませんか。
つまり、つらい現実から逃げているのではないでしょうか。
私たち断酒会員は過去の体験からアルコール依存症を、「逃げる病」と呼んでいます。
逃げ切れるものではないとうすうす気づいていながら、あらゆる状況、すべての責任から逃げようとするからです。
♣3 正当化している♦
あなたは今、医師や周囲の人たちの指導、苦言、助言を受け入れることができず、自分の飲酒を正当化していませんか。
たとえば、「体調を崩した原因は酒ではない。過労の方がもっと大きいのだ」、「酔っぱらって記憶が抜け落ちることなど、
酒飲みなら誰にでもある」、「仕事に酒はつきものだ。仕事をうまくこなすのに酒を飲んで何が悪い」、
「嘘はつきたくてついたのではない。話の流れからついそうなったのだ」、
「おまえがおれを責めすぎるから夫婦関係がおかしくなったのだ。自分のことを棚に上げて、離婚話などだすな」などのように。
あなたは、自分の飲酒に大きい問題があることを認めることができず、「酒をやめる必要はない」、
「この程度でやめるのは早すぎる」、「やめようと思えばいつでもやめられる」と言い張っていませんか。
しかし、その反面、「事実を認めると命より大切な酒が飲めなくなる」という不安が、
自分にそう言わせているのだと気づいています。だからこそ、やっきになって自分の飲酒を正当化しているのではないのですか。
事実を認めないことを「否認」といいます。
事実に反することを正当化するのも否認です。否認は人間なら誰にでもあることですが、
アルコール依存症の場合は特に強烈で、専門家はアルコール依存症のことを「否認の病」と呼んでいます。
あなたは、自分の飲酒をどんな風に否認しているのでしょうか。
♣4 諦めかけている♦
あなたは、自分の飲酒が原因で大きな問題を抱え込み、何とか自分の責任で解決しようという気になっていませんか。
あなたは、問題から逃げることができないので止むを得ず、あるいは、問題を深刻に受け止め本心から反省するようになり、
やっと自分の飲酒と向き合うようになっていませんか。
「酒で仕事を失いたくない」、「酒をやめて家庭の崩壊を防ごう」。
「酒で命を失うという馬鹿なことだけは避けたい」と考え、酒をやめる決心をしたのではないでしょうか。
しかし、あなたは自分なりに頑張ったもののすぐ失敗し、「酒はやめたくてもやめられないものだ」とあきらめ、
また酒に走っていませんか。
断酒会ではアルコール依存症のことを、「思い込みの病」と呼んでいます。長年の飲酒生活の中で、「酒があるから人生がある。
酒ほど大切なものはない」と思い込んでしまっているので、大きな問題が起こったときは、
ショックで一時的に禁酒できるが、自分1人の力だけでは断酒はできないと考えています。
また専門家たちは、「酒を中心にした生活パターンが脳に刷り込まれているので、始めに酒ありきという考え方から脱けられないのだ」と説明しています。
あなたには、諦めることよりは、「自分1人の力ではどうにもならなかった」という事実の方に目をむけてほしいものです。
♣5 誤解している♦
自分の飲酒に悩むようになると誰でも、一度は酒をやめたいと考えます。
あなたは考えただけでなく、何度も断酒に挑戦したでしょう。しかし、残念ながらあなたは、断酒会の中でやめようとしなかったので失敗しました。
それでも諦めずに挑戦したとしても、あなた1人でやめようとする限り、これからも同じ失敗を繰り返すでしょう。
あなたは、どうして断酒会を避けているのですか。
理由はたくさんあるでしょう。
しかし、あなたと同じように1人だけで頑張っている人たちに多いのは、「断酒会はアルコール依存症者の集団だから、依存症でない自分には関係ない」という否認です。
なぜそう考えるのでしょうか。
やはり、「アルコール依存症は人間失格の病気」という偏見、誤解を、酒に自由を奪われているにもかかわらず、あなた自身が持っているせいではないでしょうか。
断酒会ではアルコール依存症のことを、「家族ぐるみの病気だから、家族ぐるみで回復しなければならない」と考えています。
酒を飲まない家族が、どうして病気なのかとあなたは不審に思うかもしれません。
しかし、あなたの酒に巻き込まれた家族は悩み、苦しみ、場合によっては鬱病になったり、ノイローゼになったりすることすらあります。
また、1人のアルコール依存症者がいると、最低10人の人たちが大きな影響を受けると言われています。
妻、子供、親、兄弟、同僚、友人と、あなたのことを心配している人たちが、あなたの酒に振り回されて苦労しているのです。
あなたのことをどうでもよいと考えている人たちは、あなたがどんなに悪い酒を飲んでも影響を受けません。
どうか、このことに気づいてください。
あなたは自分の酒の問題を率直に認め、何とか断酒に踏み切ろうとして今、断酒会のことを頭に思い浮かべています。
ところが、せっかくの決意を鈍らすことが、あなたの周囲には多すぎます。
まず、あなたの飲み友達です。もしあなたが、ちょっとだけでも断酒会のことを口にすると「考えすぎだ。
おまえはまだ断酒会などに入る必要はない。それより、これからは量に気をつけることだ」などと、見当違いの助言をします。
あなたは迷います。しかい、そんなことを言う人が100人いたとしても、「入会した方がよい」と言う友人が1人いれば、
1人の方が正しい判断をし、あなたのことを本気で心配しているのです。
あなたの酒に巻き込まれて一番悩んでいるはずの妻が、「そこまでしなくても」と言う場合がまれにあります。
「一滴も飲めなくなるのは可哀そうだ」という歪んだやさしさと、「断酒会などとは外聞が悪い」という見栄が言わせているのです。
また、地方では酒害に対する認識が非常に甘く、「酒をやめたら付き合いができなくなるぞ。
おれが気をつけていてやるから断酒会などやめろ」という隣人がいます。
しかし、「断酒は自分自身の問題だ」と考えて、あなたは行動を起こしてください。
酒害者にとって断酒は早いほどよく、入会を先送りした結果、命を落とした例は多いのです。
友人、知人に断酒会員がいれば、すぐに電話して下さい。
いなければ保健所に連絡して、あなたの近くに住んでいる断酒会員を紹介してもらって下さい。
断酒会員に一目会うだけ、あるいは、電話で言葉を交わすだけでもあなたは落ち着き、断酒の決意がより固まります。
次に、一日も早く断酒会に出席して下さい。入会に踏み切れなければ見学という形でもよいのです。
そこであなたは、自分と全く同じ問題を抱え、乗り越えてきた仲間に出会うことができます。
最初から何か通じ合う物がありますので、見学から入会へと切り替えることになり、
同じ酒害を持つ仲間として、断酒の道を歩き始めるようになります。
♣2 入院中の仲間へ♦
♣① 院内で仲間を見つけましょう♦
あなたは、酒で体をこわしたのでやむを得ず、あるいは、酒をやめたくなって現在、入院中です。
あなたは、治療が進む中で体の健康はほぼ回復しました。
しかし、酒にとらわれていた心の回復の方は多分、各人各様ということではないでしょうか。
治療プログラムに沿った回復が進み、本気で断酒への意欲を燃やしている人もいますが、
もう一度だけ飲んでから断酒しよう、などと考えている人もいるでしょう。
入院中と言うことはあなたにとって、滅多にない酒の切れている時間です。
つまり、正気で自分の酒の問題と向き合える時間でもあるのです。
だから今こそ、飲酒中の自分の姿を思い出し、自分と酒の関係を覚めた頭で判断して下さい。
また、院内生活を通して断酒仲間を作って下さい。
その気のある人とそうでない人は、あなたが断酒を真剣に考えていればすぐ解りますそして、
その仲間と断酒について、今後の生活について、人生について本音で話し合いましょう。
私たち断酒会員の中には、院内で作った仲間と生涯を通じて友情を温めている人もいます。
もう一つ、病院にやってくる断酒会員にあなたの悩みを素直に打ち明けて下さい。
彼らはあなたの今後の社会生活と院内生活をつなぐ重要な役割を持っています。
彼らと仲間になることは、あなたの人生に大きなプラスになります。
何度入院しても、漫然と入院生活を送っている人の場合は、断酒ははるか遠くにあるものです。
その点、あなたは問題意識を持って治療を受けているので、断酒はすぐそこにあります。
♣② 退院後すぐ断酒会へ♦
どんなに固い決意をしていても、退院が近くになると様々な不安感に襲われます。
ごく普通の現象ですが、この不安感が原因であなたの決意が崩れることがあります。
あなたは今まで、長期間社会で断酒した経験がないので、現在院内で酒が切れているといっても、
酒のない家庭での生活を自分の頭の中にイメージすることが出来ません。
現在考えていることが、果たして退院後実現できるのだろうかと考え始めると、
あなたは徐々に自信をなくし、それが不安感につながるのです。
あなたは、その不安感をそのまま受け入れて下さい。
不安を持つことが普通で、不安がないのがおかしいと考え、この不安感が自分の断酒の成否を決定するものではない、と考えて下さい。
不安感が一杯でも、あなたが退院してすぐ断酒会を訪ねると、問題は簡単に解決します。
断酒会員の中にいると、崩れかけていた決意がすぐ自信にに変わります。
理由は、これまた簡単です。どんな不安な状態にあったにしろあなたは断酒会に参加するという、
今までどうしても実行できなかったことを実行したのですから。
病院と話し合って、退院を断酒例会のある日にして下さい。そして、その日に断酒会に顔を出して下さい。
一日、二日の遅れがあなたの命取りになることがあります。
アルコール依存症者の心は、断酒前夜には本当に揺れ動き易いものですから。
あなたは夫(妻)の酒に巻き込まれて、疲れ切っているのではないですか。
酒を隠したり、捨てたり、飲み屋に飲ませないように頼んだり、なだめたり、
すかしたり、説教したり、怒鳴ったりと、大変な毎日が続いていませんか。
そしてあなたは、様々な努力が実を結ばないのに絶望して、離婚を考えたりしているのではないでしょうか。
アルコール依存症のことを、「家族ぐるみの病気」と言います。
酒を飲んでいない家族がどうして病気なんですか、とあなたは納得できないでしょう。
しかし、どんなに頑張ってもよい結果が出ず、しかも同じことを繰り返していると、人間は心の健康を欠くようになるのです。
人によってはノイローゼや鬱病になる場合すらあります。
そこで、まずあなた自身を変えることをお薦めします。
発想を変えて、冷静に夫(妻、子供、親)の酒と向き合うのです。
面倒の見すぎやや取り越し苦労をやめ、厳しい愛で夫(妻、子供、親)を包んでやって下さい。
あなたが変わることで、あなたの夫(妻、子供、親)も変わるのです。
そのためには、自分を変えて夫(妻、子供、親)の断酒を成功させた、断酒会員の家族の話を聞くのが一番です。
断酒会や家族会に参加して見ませんか。それがあなたやあなたの夫(妻、子供、親)にとって、最善の方法だと思います。