◆アルコール依存症の家族から◆

♠1 主人はお酒を飲んで暴れるようなことはありません。
でも医者から言われても、どうしてもお酒をやめられません。
アルコール依存症なのでしょうか?♥

飲酒して暴れる、いわゆる酒乱型の問題飲酒者は減ってきています。
その一方で、一人静かに大量飲酒を続ける「静かなるアル中」や、問題飲酒をくり返しながらも仕事は何とかこなしている
ホワイトカラーの「ネクタイアル中」が増えてきています。
「飲酒によって体を壊しているのにもかかわらず飲み続ける」「仕事などに影響が出ているにもかかわらず飲み続ける」など、
飲酒によって何らかの問題が生じているのにもかかわらず、
飲酒量が減らせないあるいはやめることができない場合には、アルコール問題があると考えられます。
要は、アルコールの量を減らすかやめるかしなければならない状態なのに、それができないことが問題なのです。
これをコントロール喪失飲酒と呼び、アルコール依存症の特徴的な症状でもあります。



♠2 主人が意を決して酒さえやめてくれれば、すべての問題は解決するのではないのですか?♥
いいえ、違います。
アルコール問題は当の本人の問題だけにとどまりません。
家族もこの病気に対して正しい知識を持ち、本人とともに回復しなければなりません。



♠3 なぜ、家族も回復しなければならないのですか?♥
「イネイブラー」という用語があります。
日本語訳すれば、「可能にする人」、つまり飲酒を手助けする人の意味です。
一人のアルコール依存症の患者さんがいれば、かならずそこにこの「イネイブラー」がいます。
奥さんであったり、ご両親であったり、会社の上司であったり、
場合によってはかかりつけの内科の医者がその役割を担っていることもあります。
具体的に言えば、問題飲酒が続いていても「少しぐらいなら」と飲酒を許してしまったり、
酔っ払って暴力をふるっても翌日「もうこんなことはしないから」と本人が謝ればすぐに許してしまって飲酒を認めるなど、
アルコール問題が進行していくのを結果として助けてしまうことが、多々見られます。
当の家族は真剣に対応しているつもりなのですが、全く反対の方向に物事が進んでしまい、疲れ果てしまうのです。
 アルコール依存症者の問題飲酒に振り回され、疲れ果てて、家族は感情的にも不安定になっていきます。
そんな状態では、いくら本人が断酒していても、家族の協力も得られず、アルコール問題の根本的な解決は不可能です。


♠4 家族の回復にはどうすればよいのですか?♥
専門医療機関の家族会や断酒会に出席してみてください。
そのなかで、正しい知識を家族が身につけ、今どうするべきなのか、何が病気なのかを理解されればと思います。
本人の回復ももちろんですが、家族の回復にも年余の時間がかかります。


♠5 主人はアルコール依存症だと思うのですが、
本人は病院へ行こうとしないので困っています。♥

明らかにアルコール問題があるにもかかわらず、本人が専門医療機関にかかろうとしない場合がよくあります。
このようなケースの場合、まず本人を診察室まで引きずり出すまでがたいへんです。
でも、必ずしらふの時があるはずです。
そんな時に、お酒に対する素直な気持ちを聞きだし、本人の口から「このままではいけない。
何とかしなければ...」という言葉を引き出せれば、一歩前進できます。
そのときには、絶対に説教調になったり本人を責めたりしてはいけません。
本人の気持ちになって、話し合いを持ってあげてください。
そして、現実に今どんなことが問題になっているのか、感情的にならずにかつ具体的に本人に示してください。
身じかな家族だけではうまく行きそうにない時には、
職場の上司や親戚のなかで本人に強い影響を与えることのできる人から、話をしてもらいます。
 どんなアル中でも心のなかでは、「このままではいけない。
お酒をやめて健康になりたい」という気持ちが存在しています。
この健康な心をいかに引き出すかがカギになります。
しかし、それでも本人が納得しないこともあります。
そんな場合には、家族の中だけで悩まずに、必ず家族だけでも保健所や
各都道府県の精神保健福祉センター、専門医療機関や断酒会に相談してください。
必ず、何らかの道が開けます。


♠6 まだ酒をやめられないアルコール存症の主人に対して、
家族はどう接すればよいのでしょうか?♥

してはいけないことを箇条書きにしてみます。
1)酔っているときに、説教したり、叱ったり、脅したり、議論を吹きかけてはいけない。
2)感情的になって、暴力をふるってはいけない。
3)アルコール依存症者がするべきことを、家族が肩代りしてはいけない。
4)アルコール依存症者がうそをつくのを許したり、認めてはいけない。
5)アルコール依存症者に勝ちを譲ってはいけない。このまま酒を飲んでいては、勝ち目がないと分からせるのです。


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