アルコール依存症ってなに? 続き


依存の背景

なぜアルコール依存症になってしまったのでしょう。
長年の大量飲酒が原因で耐性が出来、飲酒をコントロールすることができなくなったことは、
結果でもありアルコール依存症の一つとも考えられます。
多くのアルコール依存症者は、飲酒問題を抱えるまでは「生真面目」「仕事第一主義」「物事に対するのめり込み」
などの性格傾向を持っていました。
そこで抱えるストレスを飲酒で紛らわせていたと思われます。
では、なぜそのようなストレスを抱えてしまったのかを、アルコール依存症者の生育歴をたどり検証して見ると様々なことが分かって来ました。

1 アディクション

アディクションとは、「害があるのにやめられないという、物質や人間関係へののめり込み」を言い、
アルコール依存症はアディクションの代表格ともいえます。



2 機能不全家族

健康な家族機能を失った家族をいいます。
親がアルコール依存症者で家族機能が麻痺した家庭はそうですし、親が厳格で子どもとして伸び伸びと過ごすことが
出来なかった家庭もこれに準じます。
そんな中で家族同士は傷つき、子どもたちは多くの悩みを表現できないまま成長して行きます。


3 共依存

この概念は、「アルコール依存症者の抱える問題を家族が代替わりし、結果として問題解決を
遅らせてしまう」という事実からスタートしました。
アルコール依存症者が抱える「借金」や「暴力行為の後始末」「対外的なトラブル」などを家族が代替わりしてしまいます。
家族としては放っておきたいことですが、「世間体」とか「家族としての義務感」がそうさせてしまいます。
しかし、アルコール依存症者は問題の深刻化に目を向けることが出来ず、
結果として問題解決を遅らせてしまうことになります。
支えてきた家族にとっては、理解に苦しむ概念と思われますが、冷静に受け止め考えて頂ければと思います。



4 世代間連鎖

アルコール依存症者の中には、親もアルコール依存症者というケースが数多くあります。
このことは何を意味するのでしょうか。
「機能不全な家族関係は世代を超えて伝わる」ということになります。
「親は立派な人なのに・・」というケースもありますが、その祖父や曽祖父の世代を見てみるとアディクションの問題が
隠れていることがよくあります。



回復するために

アルコール依存症は、
①長年の飲酒から、アルコールのコントロール障害を起こした病気
②お酒を切ると離脱症状が出現し、これも飲酒をやめられない原因の一つであること。
③飲酒のコントロール障害に伴い精神症状も出ること。

この項では、
アルコール依存症から回復するために、どんな対応をすれば良いのかを考えてみます。
そしてその中で、断酒会で回復できることについても考えてみます。


1 身体症状からの回復

身体疾患を治すには医療機関で治療することが必要となります。
しかし、治療を受けても断酒できるとは限りません。
アルコール依存症者には飲酒問題への否認があり、身体症状が回復した後に、また飲酒してしまうという悪循環を繰り返すからです。
医療機関の中では、アルコール治療プログラムを持つ専門病院があります。
通院や入院をする中で、回復し断酒するための情報提供や回復訓練を受けることができます。
また、離脱症状が重い場合、「アルコール性てんかん」や「幻聴」「幻覚」が出現しますので入院治療が必要となります。
多くの断酒会員は、これら医療機関での治療を受け回復の道を歩んでいます。



2 精神症状からの回復

飲酒に伴う精神症状は「断酒」することで回復して行きます。
断酒をすれば、飲酒するために使ってきた「否認」をする必要はありません。
「自己中心的な生き方」や「現実逃避」「刹那主義」等精神症状も少しずつ回復して行きます。
そのことを気づかせてもらえるのが断酒会での活動です。
多くの回復者を見て、自らの問題に気づき新たな生き方へとつながるのです。


3 依存の背景をみつめる

身体症状や精神症状の回復に目が行きがちですが、回復のためにもう一つ大切なことがあります。
それは、「どうしてそこまで飲まなければいけなっかたか」ということです。
幼い頃から抱えた「満たされぬ想い」や「生きづらさ」が、飲酒問題とどのように関わったかを検証する必要があります。
断酒例会で語られる体験談を聞き、話す中で「私は何を求めていたか・・・」に気づくことです。
そのことが安定した断酒へとつながっていきます。
断酒会には、「断酒新生」という言葉があります。
自らを変え、新たな生き方をするということです。


断酒会での回復

断酒会活動の目的は「自ら持つアルコール依存症からの回復」と「アルコール問題に悩む人達への援助」です。
この2つの目的達成のため断酒会で大切にしていることは、自らの体験談を語り人の体験を聞く場である「例会活動」と、
悩みを抱える人達への援助活動を円滑にするための「組織活動」です。
これら2つの活動を通して回復の道を歩んで行きます。」


1 例会活動を通しての回復

例会は家族を交えて行われます。
そこで語られる「体験談」にそれぞれが共感し、自らの問題を見つめ回復の道を歩みます。
また、家族が語る体験談は、アルコール依存症者に様々な気づきを与えてくれます。
初期の段階では、自らの家族が語る体験談に反発したり怒りを投げつけたりもしますが、不思議と他の会員家族の話には耳を傾けます。
やがて、自らの問題と根っこは同じ事に気づきます。
そして、家族と共に回復の道を歩むのです。



2 組織活動を通しての回復

断酒会のもう1つの目的である「他社への援助」を通して自らの回復も図ります。
他社への援助と言っても大げさなものではありません。
「一緒に頑張りましょう」と声かけをするのです。
他社に声かけすることは「自ら飲めない立場」を作ることになります。
断酒会はこのような理念を大切にして組織をてんかいしています。



3 断酒会で大切にしていること

断酒例会に参加して何が得られるかという視点で考えててみます

① 例会には受容がある

受容というのは無条件で受け入れてくれ、認めてくれるということです。
アルコール依存症者は、今まで周囲や家族から白い目で見られてきました。
酒が切れてくると飲まざるを得ない身体になっていました。
周囲の避難も感じ取っていました。
それでも飲酒を続けざるを得なかったのです。
そんな状態を例会の場では無条件に受け入れてくれるのです。
「そうか・・あなたの気持ちがわかるよ」
「私もそうだったよ」
「でも今のままじゃいけないよね」
「私はこうして回復した来たよ」
そんなことを、それぞれが語る」「体験談」の中から伝えてくれるのです。
「認められること」「回復の道を示してくれること」が例会で話される体験談の中にあるのです。


② 例会には一体感がある

アルコール依存症者は社会や家族の中で孤立していました。
でも、断酒会の中では「仲間」として認めてくれます。
「みんなやめているのだから、私だけ飲んではいけない」という気持ちを育ててくれます。
みんなと一緒に新たな生き方をする「断酒新生」という気持ちつながっていくのです。



③ 例会には否認の解除がある

アルコール依存症者の精神症状として「否認」がありました。
例会に出続けることによりこの否認は徐々に解けていきます。
何回も人の体験談を聞くうちに自分との差のないことがわかってきます。
「みんなと一緒」「やはり、やめなければいけない」という気持ちの変化が生じてきます。



④ 例会には反省・自覚がある

例会は本人と家族の出席を重視しています。
断酒初期、自らの家族が語る体験談は、なかなか率直には聞けません。
でも、他の家族の体験談には率直に耳を傾けます。
「そうか、そんな辛い想いをしていたのか」と感じ取るのです。
そこから自らが家族にしてきたことを思い起こします。
そして反省とアルコール依存症者であるという自覚が生まれてきます。

断酒例会は、「気付きの場」といえます。
断酒会が最も大切にしている場といえます。


ご家族の方へ


入会前のご家族へ

今までアルコール依存症者が起こす飲酒(酒害)問題に奔走されてきたことと想います。
皆さんが頑張れば頑張るほどアルコール依存症者は逆のことをしていなかったでしょうか?
回復が進んだアルコール依存症者は、皆さんに対して感謝の気持ちや反省の気持ちを持ちますが、
飲酒時代には皆さんを裏切り、逆の行動をとっていました。
冷静に考えてみると、「効果の得られない」対応をとってしまったことがあるはずです。
アルコール依存症者の起こす酒害問題を解決するために、必死に対応されたのではないでしょうか。
世間体を気にしたり、家族の義務として。「誤ったり」「弁償したり」をしたことはなかったでしょうか。
このようなことは、結果としてアルコール依存症者に楽をさせることになります。
皆さんが頑張れば頑張るほどアルコール依存症者はお酒の問題に目を向けなくなります。
酒害問題が一時的に解決し、「また酒が飲める」ようになるからです。
このような対応は、結果として効果があるとは言えませんでした。
アルコール依存症者は、自らの問題に目を向けることから回復をスタートさせていくからです。
断酒会の例会や家族会に参加して見てください。
そこでは、回復した家族からの様々な知識や知恵を学ぶことができます。
また、回復を信じることも出来ます。


入会したばかりのご家族へ

断酒会に入会し断酒がスタートします。
しかし、それだけで全てうまく行くとは限らないのです。
アルコール依存症は家族を巻き込んだ病です。
長く続いた飲酒問題で家族は心を傷つけられてきました。
共に心の痛みから回復することが必要となります。

断酒例会では、共に体験談を語ります。
でも、その体験談がともすればアルコール依存症者への「口撃」になることがあります。
かって受けた心の傷を体験談として語るうちにアルコール依存症者を攻撃してしまうことがあります。
アルコール依存症者を攻撃されると「防御」します。
その防御は新たな飲酒問題に対する「否認」につながります。
それでは回復につながりません。

避難・攻撃ではなく、その時の気持ちを、第一人称で伝へましょう
「あの問題が起きた時、私はこんな対応をした。私はそのことでこんな辛い気持ちになった・・」等、
ご家族の気持ちを、率直に伝えましょう。
語り続けるうちに、きっとアルコール依存症者の心に伝わるはずです。

断酒会の目的は「酒を断つこと」だけではありません。
酒を断ち、損なった家族関係や人間関係を回復することが本当の目的なのです。
家族の方も共に断酒会活動に参加し、信の回復を目指して頂きたいのです。
「アルコール依存症」を言葉で説明しご理解を頂くことは可能ですが、
その回復については参加してみないと理解できないものがあります。
断酒会に参加し「感じ取るもの」を手につかんで下さい。
しれが回復につながるのです。


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